「医のこころ」と仏教/池口惠觀
2017/08/21
著者は真言宗の僧侶。古い時代から自然科学、人についての考察を行ってきた仏教者として医療に対する生命倫理について書かれた一冊。
医療は明治維新を境にして東洋医学から西洋医学を中心に発展してきた。どちらが良くてどちらが悪いという事はないのだが部分的な分析に特化していく西洋医学に限界が出始めた昨今、全人医療を見直す動きがある。
宗教というと何か魂だとか精神世界を想像させるが、実際きちんと話を聞いてみると人間というものについて深く考察していく事であり、ある意味医療の一端を担っているのではないかとも思わせる。
医療に携わる者、特に医師に関しては人の命を扱う職業ゆえ、その生命倫理・医療倫理は大切にしたいところだがそこを育てるという事の難しさが病院での様々な問題の種になっている可能性がある。著者はその点を仏教とつながる事によって解決できないかと真言宗の総本山である高野山にある高野山大学に医学部を作る事すら考えた。実際できていないのだがあちこちの大学医学部へ講義に行っている。
医療問題の洗い出しから解決案まで仏教とからめることで多くのヒントがあるのではないか?と。しかし実際に宗教というからみが現実問題として難しいという事も書かれていた。
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本書もくじ
第一章:医のこころ
第一節:医療従事者のこころ構え
第二節:「抜苦与楽」の医療を求めて
第二章:仏のこころ
第一節:お釈迦様の生命倫理
第二節:密教と生命倫理
第三章:生命のこころ
第一節:生命観の歴史
第二節:現代医療の生命観
第四章:死のこころ
第一節:臓器移植と日本人の死生観
第二節:尊厳死・安楽死をどう考えるか
第五章:医と仏の共生
第一節:仏教と医療は同源
第二節:加持祈祷の世界
第六章:医のこころざし
第一節:日本の医療はどこへ行く
第二節:新しい医療を求めて